ある国ある地方ある街に
とても宗教熱心な男がいました。
その男はいつも川のそばで生活していました。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
褪めない夢
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ばりばりばり、まるでおとぎ話で狩人が狼の腹に石を詰め込むように残酷に、世界は色を変えていく。
幸せだった今までは、そんなの初めからなかったかのように。
でもどれも、本当の幸せなんてない。
6月を越えられなければ。
「あうあうあう、今回も、なのです・・・。」
「分かってるわ、言われなくても。」
きっともう駄目なんだ。
何をしたって救われない。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
ある日男は”洪水になるから避難するように”と無線で連絡を受けました。
しかし男は「私は信心深いから祈れば神が守ってくださる」とだけ言って無線を切りました。

 
 
 
 
 
 
 
 
本当は、世界は何も変わっていない。
色も、姿も、私が死ぬ事も。
でも変わってしまう。他人は。
 
私にしか見えない、まるでおとぎ話の王様の洋服のような存在、羽入が、謝っている。変わってしまった人物に。
「ごめんなさい」
と。
私にも謝ってほしかった。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そしてどんどん水かさは増し、ボートに乗った男がやって来ました。
「洪水だ。避難所へ行こう。」
しかし男は「私は信心深いから祈れば神が守ってくださる」とだけ。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
とうとう人が死んでしまった。
とうとう私が死ぬ日が来てしまった。
もういい。
どうでもいい。
何も変わらない。変わるけど、変わらない。
おとぎ話とは残酷だ。綺麗な場面だけを見せて夢を見せる。
でももう、そんなことすら脳にまわらない、何の話をしてたんだっけ?

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それからヘリコプターがやってきて、メガホンで誰かが叫びました。
「そこの君、街は洪水だ。ハシゴをかけるからのぼってきなさい」
しかし男は相変わらず「私は信心深いから祈れば神が守ってくださる」とだけ。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
いつの間にか私は外を出て道を歩いていた。
さっきまで沙都子と家で遊んでいたはずなのに。 夕方はカナカナとひぐらしがうるさい。
私も鳴く、嘆く。
この世界を恨みながら、諦めながら。
となりには羽入。
あうあう言って会話にならず。
しかし急に羽入の顔がいつもより泣きそうになって、
 
私はハンカチを口にあてられた。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして、ついに男は溺れ死にました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
また、同じ世界にいくのかしら?
変わらない、また私が死ぬ世界に。
何故、こんなことを?
何故、こんなことに?
何故、変わらないの?
何故、変わるの?
 
 
 
また、何も出来ずに変わっていくのを眺めているだけで終わるの?

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
天国の門の前に立った男は、神に面会を求めました。
「神よ、私は祈りを捧げました。愛されていると思ったのに、何故こんな目に?」
神は言いました。
 
 
「私はあなたに無線もボートもヘリコプターも差し向けたのに、何故あなたは今ここにいるのですか?」と。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
神よ、幸せになりたいと祈っても、私にはそんなもの訪れることはないのでしょうか?
 
 
となりにいる神様は、ただ泣いているだけだった。

 
 
 
 
 
 
 
end.
 
+++++++++
 
間にある話は私が今はまっている『ホワイトハウス』というドラマから。
答えもヒントもすぐ近くにあってしかも簡単なのに、それを探しもしなかった頃の梨花のお話でした。(全部言っちゃった。笑)
解説なければ分かりませんよね・・・。