あぁ世界はなんて美しいのかしら!?
 
 
 
正面に見える天井と、あなたの布越しの体温に
ら 」
 
 
 
 
あぁもういっそこのまま攫ってくれたならいいのに!
今は重いよりも想いが強いなんて言ってみたり。
脳の中のひぐらし達がカナカナと鳴きやまない。
外でも十分ひぐらしは鳴いているというのにも関わらずまだ飽き足りないというのかこの野郎。とりあえず落ち着け。
それなのにいつしかひぐらし達はあたしの考えとは正反対に脳のみならず全身に行き渡り(特に胸のあたりに)
そして鳴くことに夢中になってそのままあたしの酸素までも奪いとったものだから、あたしの分が無くなってしまって息が出来ない。
そうなってしまった原因は未だ私の上、顔を上げてくれないから表情が分からない。
 
 
そうなってしまった原因の理由はいつもの部活、なのにいつもみたくなくあたしが最下位で。
最近は全く罰ゲームなんてやってなかったから今日も勝つんだと驕ってた。
でも結局あたしが負けちゃって。
今日の罰ゲームはなんだっけ?
あぁ、『最下位の人はトップの人の願いを叶えなければならない』だ。
そういえば今日は圭ちゃんが最初からトップだったなー。
・・・
・・・・・・
・・・違うんだから、なんて今言ってしまえば何が違うのかと問い正されて、墓穴。
だからあえて何も言わないし。思わないし。
 
だからみんなの私が最下位になってしまったことに対する驚愕の表情と言葉を見たり聞いたりしながら、
あたしはその時を待つことにした。
部活は非情だからね。罰ゲームは絶対だからね。しょうがない。レナがにやついてるのは無視。
 
 
「じゃぁな〜とりあえずゴスロリ服に着替えろ。」
にやりという擬音がこれほどまでに似合う表情は無いだろうという満面の笑みで発言。
しかしあたしはそれにこんな感想を漏らしている場合では無いのだ。
罰ゲームに異議。とりあえず。
「ご、ゴスロリ!?む、無理無理!!おじさんそうゆうひらひらしたやつは着れないよ〜!!」
「だから着るんだろう。それが罰ゲームだ。」なんとさわやかな歪んだ笑顔だろう。
「はぅう〜!魅ぃちゃんのふりふりひらひらぁぁ〜!はぅぅうぅ〜!」
「部長である魅音さんがそれを言ってはいけませんでしてよ!!さ、梨花!!」
「はいなのです☆もうここに用意してありますですよ、にぱー☆」
なんと用意が良い我ら部活メンバー。梨花ちゃんの手にはゴスロリ服だかメイド服だかわからない、
とにかくふりふりひらひらな決して和服ではない服があった。
心の準備がまだ終わってない。
「ちょ、まってよ。おじさん心の・・・」
言い終わる前に圭ちゃんは梨花ちゃんの手にあった服を鷲づかみあたしの胸の中に押し付け
 
 
 
 
ようとしたところさっきまで部活の時に座っていた椅子に圭ちゃんがつまづいた。
 
 
ガタッと威勢良く音を立てれば、次の瞬間それはさらに大きな音を立ててから沈黙。
しかしそんな音は部活メンバー全員(あたし含む)には聞こえなかった。
 
 
「「あっ!」」
 
 
 
経験したことはないのだけれど何だか走馬灯のようにゆっくりと、空気が震えてそのまま暗転。
 
 
 
 
 
あぁ世界はなんて美しいのかしら!
 
 
 
 
明転、そして今に至るという原因の理由。
あたしの上にゴスロリ服をはさんで圭ちゃん。
本当にこのゴスロリ服がもどかしいなんて気持ちはどこにもない、本当に。本当。
だってひぐらし達がついにはそんなあたしの思考力さえも奪ってしまいそうなんだもの。カナカナカナ。
「二人とも、大丈夫かな・・・かな?」
レナがそういうのと同じくらいに、ようやく圭ちゃんが起き上がった。
耳をすませば椅子が落ちた時の余韻がまだ震えて聞こえた。一時間は経っただろうか。
「い、・・・ってて」
笑顔じゃない顔の歪みに私は問いかける。
「だ、大丈夫・・・??」
「ん、あ、あぁ            
あたしの目の前に、圭ちゃんの瞳。
息がかかってしまうんじゃないかと不安になる距離。
「うわあ!ご、ごめん魅音、いや、その、そうゆうわけじゃなくて・・・!」
ばっとしていきなり立ち上がる圭ちゃん。
そしていきなり良くわからない弁明を始める圭ちゃんに脳内のひぐらしは私に酸素を与えてくれるようになった。
「・・・?」
「いや、そのだから、「押し倒したい」っていう願いなんかじゃないんだ!!信じてくれ!!」
そう言った瞬間の、圭ちゃんの、表情。
目はあたしの方を見てくれなくて、顔はもう真っ赤で、右手は頭を掻いていて、左手は腰にあてて。
つまり、
つまり・・・
照れて、いるのだ・・・
 
 
 
そんな表情、男友達に見せる表情・・・?
それとも圭ちゃんは男友達と倒れちゃって「押し倒したいっていう願いじゃないんだ」って赤くなりながら弁明する人?
 
 
 
 
 
そうじゃなかったら 期待 しちゃう よ   ?
 
 
 
 
 
 
ぱああ、と、世界が影なんて見当たらないくらいに輝きだす。
 
 
 
 
 
きっとこれは圭ちゃんの赤面が移ってしまったのね。
それともこのひらひらと舞っている赤い薔薇の花びら達が私の顔に反射してしまっているのかしら。
さっきから顔が熱くてたまらないの。
 
 
 
 
 
 
 
あぁ、
 
 
 
あぁもしも時よ止まれお前は美しいと言ったら幸せなまま全てを終わらせることが出来るのかしら?
 
 
 
あぁあぁ何か言葉を言うのなら
これが一番しっくりくるの。
あたしは神様なんて信じないけれど、
さっきから口をつぐんでは言葉がそれをこじ開けようと。
 
 
 
あぁあぁもしもそれが幸せだというのなら
もう何もしないでじっとしてて、アーメン!
 
 
 
 
 
fin